セメント瓦の修理方法|症状別の対処法を解説

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ご自宅のセメント瓦にひび割れやズレを見つけたら、早めの対処が非常に重要です。小さな劣化でも放置すると雨漏りや下地の腐食に繋がり、最終的に修理費用が高額になる可能性があります。

この記事では、セメント瓦の劣化症状の見分け方から、症状レベルに応じた適切な修理方法、費用相場までを専門家の視点で分かりやすく解説します。

セメント瓦の劣化サイン

ひび割れ・欠け

セメント瓦の劣化で最も注意すべき症状が「ひび割れ(クラック)」です。髪の毛ほどの細いヘアークラックでも雨水は浸入し、放置すればひびは徐々に拡大します。

症状の進行

  • 1mm未満のひび(ヘアークラック)
    塗装によるメンテナンスで対応可能な場合があります。
  • 1mm以上のひび・欠け・割れ
    瓦の交換や部分補修が必要です。特に瓦の重なり部分や端の損傷は雨漏りに直結するため、発見次第、速やかに専門業者に相談しましょう。

 

瓦のズレ・浮き

強風や地震の揺れ、固定力の低下によって瓦がズレたり浮いたりすることがあります。見た目は小さな変化でも、屋根の防水機能が著しく低下している危険な状態です。ズレた隙間から雨水が浸入し、屋根の下地材を腐食させる原因となります。

また、浮いた瓦が強風で飛ばされると、ご近所の家屋や通行人に被害を及ぼす二次災害のリスクも考えられます。台風シーズン前には特に注意深く点検することが大切です。

塗装の剥がれ・色あせ

セメント瓦は素材自体に防水性がなく、表面の塗装によって防水機能を保っています。塗装が剥がれると、瓦本体が水分を吸収し始め、強度低下やひび割れの原因となります。

  • 色あせ
    紫外線による劣化の初期サインです。この段階で再塗装するのが、屋根を長持ちさせる上で最も経済的です。
  • 塗装の剥がれ
    放置すると、剥がれた部分からコケやカビが発生し、さらなる劣化を促進します。

 

セメント瓦が割れる主な原因

経年劣化

セメント瓦自体の耐用年数は30年~40年ほどですが、これは10年~15年に一度の塗装メンテナンスを行っていることが前提です。

塗装が劣化すると、紫外線や雨水の影響を直接受けるようになり、素材の劣化が加速します。特に、瓦が吸収した水分が冬場に凍結と融解を繰り返す「凍害(とうがい)」は、ひび割れを内部から促進させる大きな原因です。

飛来物や落下物による衝撃

台風で飛んできた物や、大きな雹(ひょう)による物理的な衝撃で瓦が割れることがあります。被害を防ぐため、日頃から庭木の剪定を行ったり、強風時に飛ばされそうな物を片付けたりする対策が有効です。

なお、こうした自然災害による被害は、火災保険の「風災補償」が適用される場合があります。被害を受けたら、まずは写真で状況を記録し、保険会社に連絡しましょう。

施工不良や人の踏み圧

新築時の施工不良や、過去のメンテナンス時に業者が不適切に屋根の上を歩いた「踏み圧」によって割れが生じることがあります。セメント瓦は陶器瓦と比べて衝撃に弱いため、専門家でも知識なく歩くと割ってしまうことがあります。DIYでの屋根作業は、こうしたリスクも伴うため推奨されません。

セメント瓦の修理方法

部分補修(シーリング・瓦交換)

軽微なひび割れにはシーリング材による補修が効果的です。

ウレタン系やシリコン系のシーリング材を使用し、ひび割れ部分を確実に封止します。

適用症状

  • 1cm未満のひび割れ
  • 局部的な欠け
  • 数枚程度の瓦交換

大きく割れた瓦は新しい瓦への交換が必要ですが、セメント瓦は現在製造されていないため、類似の化粧スレートや陶器瓦で代用することが一般的です。

メリット

  • 修理費用が安い(1枚あたり5,000〜15,000円程度)
  • 工期が短い(1〜2日)
  • 他の瓦に影響しない
  • 緊急対応が可能

デメリット

  • 根本的な解決にならない場合がある
  • 色合わせが困難
  • 他の瓦の劣化は進行する
  • 再発の可能性

屋根塗装

塗装の劣化が主な症状の場合、屋根塗装による修理が適しています。

下塗り、中塗り、上塗りの3工程で行い、瓦の防水性と美観を回復させます。

塗装工事の流れ

  1. 高圧洗浄による汚れ除去
  2. ひび割れ等の下地補修
  3. プライマー(下塗り)塗装
  4. 中塗り・上塗り塗装

使用する塗料により耐用年数が変わり、アクリル系で5~7年、ウレタン系で8~10年程度の効果が期待できます。

メリット

  • 瓦の延命効果(10〜15年)
  • 美観の向上
  • 防水性能の回復
  • 他の修理方法より安価

デメリット

  • 構造的な問題は解決できない
  • 塗装の定期的なメンテナンスが必要
  • 重度の損傷には不適切
  • 下地の状態により効果が限定的

 

葺き替え工事

セメント瓦を完全に撤去し、新しい屋根材に交換する最も確実な修理方法です。

下地の状態も同時に確認・修理できるため、根本的な解決が可能です。

葺き替えが必要なケース

  • 広範囲にわたる瓦の損傷
  • 下地材の腐食・劣化
  • 雨漏りの繰り返し発生

費用は高額ですが長期的な安心を得られる方法です。

メリット

  • 根本的な問題解決
  • 長期的な安心感(20〜30年)
  • 下地の完全な修理が可能
  • 軽量屋根材への変更で耐震性向上

デメリット

  • 高額な費用(100〜200万円程度)
  • 長期の工期(2〜3週間)
  • 仮住まいが必要な場合がある
  • 廃材処理費用

 

セメント瓦の割れを放置する3つのリスク

1. 雨漏りの発生と拡大

ひび割れから侵入した雨水は、屋根裏の防水シートや下地材を劣化させ、やがて室内の雨漏りに繋がります。天井にシミができた時点で、屋根裏では被害がかなり進行していると考えられます。

2. 下地や構造材の腐食

雨水の浸入が続くと、屋根を支える野地板(のじいた)や垂木(たるき)といった木材が腐食します。腐食が進むと屋根全体の強度が低下し、地震や強風で屋根が破損する危険性が高まります

3. 最終的な修繕費用の高額化

早期の部分補修なら数万円で済んだはずが、放置した結果、雨漏りや下地の腐食にまで発展すると、葺き替え工事が必要となり100万円以上の大規模な出費に繋がります。早期発見・早期対応が、結果的に最も経済的な選択です。

 

セメント瓦修理のDIYを推奨しない2つの理由

1. 高所作業に伴う落下の危険性

屋根の上は非常に滑りやすく、専門家でさえ安全帯やヘルメット、滑りにくい靴などの安全対策を徹底して作業します。知識や装備のないまま屋根に上ることは、命に関わる重大な転落事故に繋がる可能性があり、絶対に避けるべきです。

2. 不適切な修理による症状の悪化

原因を正しく特定せずに修理を行うと、かえって症状を悪化させる危険があります。例えば、雨水の出口をシーリング材で塞いでしまい、水の逃げ場がなくなって別の場所から雨漏りが始まるケースは少なくありません。結果的にプロに再修理を依頼することになり、余計な費用がかかってしまいます。

まとめ

セメント瓦の修理は、劣化症状のレベルに応じて適切な方法を選ぶことが重要です。軽微なひび割れや色あせでも、放置すれば大規模な工事が必要になるため、早期の対応が大切です。

  • 劣化サインを見つけたら、まずは専門業者に点検を依頼する。
  • 修理方法は、部分補修、塗装、カバー工法、葺き替えの4つが基本。
  • 費用やメリット・デメリットを比較し、最適な方法を選択する。
  • DIYでの修理は危険性が高いため、必ず信頼できる専門業者に依頼する。

定期的な点検と適切な時期のメンテナンスで、大切なお住まいを長く守りましょう。